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オピニオン

次世代育成支援行動計画で認定を受けて

職員300人以下の企業で福岡県初の認定

 皆さん、「次世代育成支援行動計画」をご存知でしょうか。これは、次世代育成対策推進法(次代の社会を担う子供が健やかに生まれ、かつ育成される社会の形成に資することを目的に定められた法律)に基づいて、雇用者が仕事と子育てを両立させ、また少子化の流れを変えるために事業主が策定した計画書のことです。 その目標をクリアーし、昨年12月20日に県より「基準適合一般事業主認定」を受けました。今回の認定は福岡県で7番目、北九州市では初の認定で、しかも職員数300人以下の努力義務企業では県内初の認定となりました。この様に当院は、福岡県の一般企業の中でも進んでいる方だと自負しています。当院の今までの取り組みをお話します。

子育て支援制度導入の経緯

 病院職員の8割は女性で、特に看護師に女性が多いのはどの医療機関でも同様でしょう。その女性職員が、入職後,3~4年で結婚・出産・育児で退職することになれば、せっかく育てた優秀な職員が流出し、また一から教育を繰り返さなければならないことになります。 経営会議で,退職しない環境・支援をどうするか議論していましたが、職員自らも「結婚・出産・育児に直面した時にどうしたら退職しなくてもよいだろうか」と考え始めたことが子育て支援への取組みのきっかけとなりました。院内にいくつものクラブ活動が発足すると同時に,職員による「職場環境改善提案会議」が生まれました。その「職場環境改善提案会議」の中で、福岡県が推奨する「子育て応援宣言」へ当院が手をあげてはどうかという提案が出され、平成16年3月、県内18番目に登録しました。昨年12月28日時点で1,275社が宣言しています。当院のような中小企業ができることとして、ハード面ではなく、ソフト面での支援を中心に考えていこうとする気運が生まれました。

育児休業復帰率100%、男性育休1名取得

 平成17年4月に次世代育成支援法が制定されましたので、その法律を活用し,「次世代育成支援行動計画」を策定して、平成20年3月までの3年間の目標としました。この「次世代育成支援行動計画」策定に関しても、「職場環境改善提案会議」メンバーが大きな力を発揮しました。その1番目の内容は、「育児休業取得率の向上」で、女性の育児休業取得率70%以上、男性は1人以上育児休業を取得することを目標とし、昨年11月までで,女性の育児休業復帰率は100%,11月に男性1名が育児休業を取得しました。平成16年に「子育て応援宣言」を行ってから約4年が経過しますが,宣言後に育児休業を取得した職員は,延べ21人を数えるほどになりました。宣言前の4年間で7人でしたので,宣言を境にして,3倍という予想以上の数字となっています。時間の経過とともに,産休・育休を取るのが当たり前という病院の風土が自然にでき上がり,2度目の産休・育休を取得する職員も出てきました。

常勤短時間勤務制度、ノー残業デー

 次に「常勤短時間勤務制度」を平成18年8月に導入しました。その内容は,出勤・退勤30分単位で計1時間の短縮勤務ができる制度で,小学校就学2年生前までの子供のいる人が取得可能となっています。さらに,子供の長期休暇,例えば,夏休みだけの取得も可能とし,職員の家庭環境に応じてフレキシブルに対応しています。現在9人の短時間勤務取得者がいますが,今までの総計では24人となっています。また現在,産休・育休取得者が数人,さらに今後,結婚や出産を控えた職員もいますので,この制度を利用する職員が入れ替わり,制度利用総数が増えていくことになります。 また,「ノー残業デー」を当初,月中1日に設定していましたが,月中3日のいずれか,主に第3水・木・金曜日を選択できるように平成17年12月に変更しました。

1週間の連続休暇取得奨励

 さらに,「次世代育成支援行動計画」とは別に,「連続休暇取得奨励規定」制度を平成18年4月に導入しました。当院では20歳代・30歳代の職員が65%を占め,ますます子育て職員が増える傾向にあります。しかし,今まで行ってきた子育て支援制度は,小学2年生未満の子供を持つ子育て対象職員だけに限定されます。 そこで,1年に1回,7日間の連続休暇を全職員対象(勤続年数 既卒者1年以上、新卒者2年以上が必要)に,理由を問わず取得してもらう制度を作成することにしました。1週間家族で過ごしながら、その間に少しでも父親に育児を手伝ってもらったり、あるいは休息して心身のリフレッシュをしてもらいます。そしてまた新たな気持ちで勤務してもらえれば,職員の定着率の向上にも寄与すると考えたからです。もちろん、同じ部署の複数の職員が同時に取得することになると、業務に支障が出てしまうので部署内で調整することが大前提です。 同規定を施行してから2年半が経過しますが、今までに申請された人数は75人、件数は91件で対象者の55%に相当します。その内訳は,看護師32人,准看護師7人、看護助手13人,理学療法士6人,作業療法士3人他で,看護師に取得者が多いことから,この制度を理解し,順調に推移しているとみるべきでしょう。件数が人数より多いのは、2回目を取得しているからです。

子育て支援制度がもたらす効果

 今まで書きました様に、子育て支援制度は職員の定着率の向上という実質的なプラス面もありますが、さらに人と時間の有効活用の習慣がつくという効果もありました。よく「人が足りない」という言葉を聞きますが、そうではなく「仕事に対して優先順位をつけてさばいていく」というのが本来の姿です。「人が足りない」と口にする前に「どうやったらこの人数で何とかやっていけるか」を考える癖がつきます。1週間の連続休暇なんてとんでもない、という声もありましたが、何とか工夫を凝らせばやっていけるものです。課長(科長)クラスもどんどん取得しています。また、仕事の責任者が不在だと次のポジションの人は何とかしなければならず、その人のトレーニングにもなります。 以前子育てに関する県の座談会に出たのですが、ある会社は外資系に変わった途端「サービス残業禁止、破った人は罰する」と言われ、「随分戸惑ったものの、企業風土が完全に変わり時間内にやりくりするようになった。やれば何とか出来るものです。」と言っておられたのが印象的でした。

なぜ熱心に子育て支援をするのか

 よくこういう質問をされます。それは20年前私が米国へ留学していたことが大きいと思います。ニューヨーク州立大学バッファロー校の生理学へVisiting Assistant Professor として1985年赴任し、2年間を過ごしました。私のボスの教授は(生理学に教授が16人いましたが、その1人)毎日午後4時に大学を出ていました。不審に思って私はある日、聞いてみました。「Jack(アメリカでは教授さえもニックネームで呼びます。)、なぜ4時に帰るのですか。」「Hajime、それは子供を保育所に迎えに行くからだよ。」「え、そうなんですか。」びっくりしました。今でもこういうお父さんは皆さんのまわりにはいらっしゃらないでしょう。それが20年前です。しかも奥さんは同じ大学で5時まで働いていたんです。私も実はこのおかげで4時半に大学を出られる恩恵を被っていたのですが。 もちろん他の研究者や職員も5時には大学を出ます。残っているのは大学院の学生だけです。彼らには1年でも早く研究を仕上げて卒業したいという自分の為の明確な目的があるからです。アメリカでは基本的には5時過ぎて仕事をしていると「あの人は段取りの能力が低いので予定通り終わらないのだ。」とマイナス評価です。仕事を終えた私は家でゆっくりくつろいだり、近くの公園にバーベキューに出かけたりしていました。夏時間で8時半まで明るいので、夕方5時からゴルフに行ったこともあります。その頃、日本の個人の所得が世界一という統計が出ましたが、全く実感は有りません。「そんな事はない、アメリカの暮らしの方が豊かだ」と思っていました。この頃ワークライフバランスという言葉があったかどうか知りませんが、そのバランスがとれていたのです。 もう一つの理由は母が女医で働いていた事です。母は産婦人科医でしたので、お産があると遊園地に連れて行ってもらう予定が急にキャンセルになっていました。小さい頃は恨んでいましたが、物心がつくようになってからは、逆に仕事を持った母親を誇りに思うようになりました。一度大学生の時、仲の良かった友人から「女医さんはいらん。子育てで働かれない時期があるから。」と言われた時は、猛反発をして大喧嘩をしたことを今でも覚えています。 この二つの出来事が今の私を作っているのだと思います。

企業にとって子育て支援はプラス

 知人に子育て支援を勧めると、よく返ってくる言葉が「お金がかかって企業にとって損失ではないか。」という言葉です。それは誤解です。一生懸命に教育した従業員が辞めたら企業はいくら損をするのでしょうか。上司が教育に割いた時間や研修に割いた時間を計算すると莫大な損失となっているでしょう。又、逆にとてもよく教育された人材にその会社へ来てもらえればどれだけ費用を節約出来るのでしょう。私は別にお金の計算で子育て支援をしているわけではありませんが、お金の事しか頭にない人にはこのような話をします。 当院の例を示しましょう。当院の短時間勤務制度を見て、子育てと両立できると就職した人が何人もいます。又、当院の女性職員が遠距離恋愛の末、結婚を決意しましたが、ご主人の地方には安心して子育てが出来る環境がないということで、ご主人が転職して奥さんのもとへ引越ししてきたという例もあります。この様に実質的なプラスは必ずあります。

ボトムアップとトップダウンそしてスピード

 当院の子育て支援制度は、わずか1年で次々に施行していきましたが、それは中小企業のメリットを生かせたのだと思います。まず、従業員で作った職場環境改善提案会議が、「どういう支援策をして欲しいか」アンケートをとりました。すると、1番多かったのは短時間勤務です。すぐに私が決断し、総務部で規則を作って説明会を開き、実行しました。皆の希望を入れて、短時間勤務を毎日とっても良いし、夏休みだけあるいは月何回など様々な希望を取り入れました。連続休暇制度も年1回行なっている職員の満足度調査で、連続した休みが取れないというのが一番の不満というのが分かったので作りました。これは子育て職員に関わらず、全ての職員に関係します。これもすぐに決断し、規則を作り実行しました。 この様に、すばやく実行できるのは、中小企業ならではのメリットではないでしょうか。そしてボトムアップだと自分達で決めた事だと受け入れやすいものです。決して総務部が、ある日突然規則を皆に知らせても、うまくいったかどうか分かりません。資金面で例えば保育施設を作るのは難しいのでこういうソフト面で対応してきました。

雰囲気作りが最重要

 今言った様に、規則はすぐに出来ても、上司に理解があり、支援をして当たり前という雰囲気がないとうまくいきません。幸いそういう雰囲気がすぐに育ち、子育て応援宣言後、皆がどんどん制度を利用するようになりました。それはやはり当院に父の代から存在する企業風土があったからだと思います。当院のクリスマス会はホテルの立食スタイルですが、子供も参加OKで、昨年は大人134名、子供42名と子供で溢れていました。そして私がサンタになり、子供達にプレゼントを配ります。夜、出かけることが難しい女性職員にとって、子供と一緒になら参加できると大変好評で、これも子育て支援のひとつかと思っています。しかしこれはもう昭和30年代からあり、私も子供の頃従業員の子供とパーティーで遊んだ記憶があります。私はずっと当たり前の様に思っていましたが、講演会等で話すと驚かれます。ともかく育児支援して当たり前という雰囲気が重要です。

育休中のケアも大切

 以前当院の職員がセミナーに行った時に、育休中に何の連絡もなく、復帰前日に「職場が変わりました」と連絡があって、とても憤慨したという話を聞いてきました。当院ではそんな事のない様に工夫しています。育休中手続きは郵送でも出来るのですが、あえて2ヶ月に1度子供を連れて来院してもらい、育休中あるいは復帰時の悩みがないか等相談を受けています。そしてその時、職場を訪問してもらっています。同僚、上司達が寄ってきて「かわいいね。」「大きくなったね。」と皆から声を掛けられます。育休中は自分が忘れられていないか心配ですが、その心配等どこかへ飛んでいき、又、戻ってきて働くんだと力が湧いてくるらしいのです。また、院内報を送付したり、手紙に手書きのメッセージを入れるなど工夫をして、ともかくまた一緒に働こうというメッセージを送り続けます。その事が育休復帰率100%につながっていると思います。

男女協働実践企業表彰5周年記念受賞者リレートークにて発表

 平成19年2月24日に北九州市のムーブで行なわれ、私も当院の取り組みを発表しました。冒頭の講演はパク・ジョアン・スックチャ氏でしたが、その時私は初めて「ワークライフバランス」という言葉を耳にしました。自分の生活と仕事をバランスをとらないといけないとのことです。その為には家庭内の男女平等が必要とのことで、なるほどだと思いました。

男女共同参画セミナーにパネリストとして参加

 平成19年9月22日、福岡県社会教育センターにてセミナーがあり、パネリストとして参加しました。まず、山田正人氏の「男の育児休暇について」という講演がありました。山田氏は「経産省の山田課長補佐 ただいま育休中」の著者で、1年間男性育休を取られた方です。少し内容に触れてみます。育休を決断した際の周囲の反応は、興味深いものでした。妻の両親は怪訝な顔、実の両親は「育児休暇、いいねぇ。お前もずっと働いたのだから少し休んでいいよ。良かったね。」と言ったそうです。ところが正反対で「育児休業」とはそんなに楽なものではなく、「育児労働」だったとのことでした。又、家に帰らない日本の父親というのも印象的でした。午後7時までに夫が帰宅する割合はストックホルム8割、ハンブルグで6割、パリで5割、東京で2割。夕食を何回家族全員で取るのかに対して週7日と答えた人の割合は、パリで46%、ハンブルグで38%、ストックホルムで32%、東京では17%との事でした。山田氏は究極的には家庭内での男女平等が大切と強調され、前述のリレートークの時の講演会と同じ結論でした。

Equal Opportunity

 家庭内平等で思い出した言葉があります。アメリカでよく“equal opportunity”という言葉を聞きました。人間は、皮膚の色・目の色・国籍等で区別してはいけない、皆に平等の機会があり、能力によってのみ判断されるということです。アメリカの大都市で女性として初めて市長になった人が、「私は女性だから注目された事はあったが、女性だから市長になった訳ではない。能力で判断されたと思う。」と言っていたのが印象的でした。職場で男だからとか女だからとか言うのは良くない事だと思います。幸い当院は女性が多いので普通の企業とは少し事情が違うかもしれません。男女の区別なく皆が出せる力を遺憾なく発揮すれば、男性にとっても女性にとっても楽なのではないでしょうか。子育て支援をして、全ての人が子育てというハンディを負わず、力を目いっぱい発揮できる社会が理想で、その為に企業で出来ることをやるというのが、企業の社会責任だと思っています。

啓蒙活動

 2つの講演会以外もTV・ラジオ出演や新聞報道等の育児支援の啓蒙にも力を注ぎました。TVは録画とはいえ、長い文章を喋るのには緊張しました。ラジオはFM KitaQで生放送でしたのでもっと緊張しました。当院職員と2人で30分間、今日書いた様な事を全て喋ってきました。また一番嬉しかったのは、内閣府政策統括官(共生社会政策担当)の「企業における子育て支援とその導入効果に関する調査研究」報告書に、成功例全国10社のうちの1つとして掲載されたことです。当院の取り組みが詳細に報告されました。その他表彰は、「平成17年度わたしの職場のボス自慢!取り組み自慢!」の取り組み賞受賞、「第1回北九州市子育てしやすい環境づくりを進める企業・団体表彰」の市長賞受賞の2つで、努力が認められて嬉しく思っています。  この様に頻繁に報道されると、報道が報道を呼ぶということが分かりました。子育て支援の分野では随分当院の名前が浸透してきました。

まとめ

 以上当院の取り組みをお話してきました。今感じるのは、熱心に取り組んだおかげで色々な講演に呼んでいただき、普段会えない人にもお会いしてお話を聞くことが出来、自分にとってプラスになったということです。 こうやって取り組んでみて思うことは、繰り返しになりますが子育て支援は企業にとってプラスということです。従業員のアイデアを実現し、従業員が幸せになる事は経営者としてもとても嬉しいことです。当院は従業員満足度調査をして、厳しい意見もありますがその結果を張り出しております。そして出来ることはやる様努めています。それにより少しでも従業員がやる気を起こしてくれ、患者さんや家族に優しく接し、病院の評判が上がれば、こんなに嬉しいことはありません。子育て支援にかかわらず、従業員満足度を上げる施策、皆様どうかご検討下さい。

(福岡県私設病院協会ニュース 平成20年2月号に掲載)

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社会参加に移送不可欠

介護タクシーをめぐる議論が活発のようです。介護保険で訪問介護として取り扱われていますが、移送サービスと位置づけて、全体的なシステムを構築することが大切だと思います。

タクシーだけでなく、ドアからドアまで運行するミニバスや、車いす対応の駅など公共交通網の整備、身障者向けの自動車学校の設置など幅広く検討すべきです。それが社会的コストの抑制にもつながります。デイサービスなどでは、車が地域の高齢者宅を巡回して数人を一度に施設(目的地)まで連れていっている。これを参考にした移送システムも考えられます。

先日、米国の病院を視察した。大小さまざまなバスや車が移送で活躍していました。移送の問題解決なしには、体が不自由な人たちの社会参加・復帰の実現は難しい。国民全体検討すべき課題だと思います。

(西日本新聞 平成13年6月2日 「暮らしと社会保障 あしたへ」に掲載)

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介護ビジネス?

介護ビジネスという言葉が一般の人の間で、口々に言われ始めて久しいですが、私は以前よりこの言葉に反発を感じていました。「ビジネスで介護はできない。人と人とのつながりですよ。」と言ってきました。ビジネス畑の人は、この言葉を嘲笑するかも知れません。「企業ですから利益追求ですよ、何甘いこと言ってるんです。」それも一つの真理でしょう。マスコミは、医療は「医は仁術」「赤ひげ先生でなければ」と言いながら、介護はビジネスと言っているのは大変な矛盾だと私は感じています。競争がおきれば選択の巾が広がり消費者に有利だと...本当でしょうか。80才近いおじいさん、おばあさんの世帯が、若者がコンピューターを選ぶ時カタログを熱心に見比べるのと同じように、介護業者を比較しながら選べるでしょうか。ケアプランを作る時でさえ、「あなたにまかせます。」とケアマネージャーに言う人が多くいらっしゃるのが事実です。自分で自分の道を選ぶ訓練のできてない世代は選択の自由があっても、仲々使えないものです。その善悪の区別さえつかないのが実態でしょう。それを考えると、悪い業者は、駆逐されるべきでしょう。アメリカでは大手石油会社の在宅会社がつぶれたと聞きます。当院では介護保険の開始は「大きなビジネスチャンス」という視点ではなく、「当院にとって必然性のあるサービスを必要としている人に順次提供していく」という考え方でやってきましたが、それはまちがいではなかったと今でも思っています。

そもそも介護は人と人と1対1で向き合う仕事です。ごまかそうとしても絶対ごまかせません。評価は、受ける人がどう感じたかの一点につきます。その人がどこから派遣されてきたかでなく、その人がどういう人かとういことのみが、意味を持ってきます。介護は人の家に上がりこんでいくので本当に信頼できる人でないと恐ろしくて派遣できません。当院でも細心の注意を払いながら人選をしています。

ビジネスということばもここ3ヶ月で声が小さくなってきました。「利用者が本当に必要とするサービスの提供」私はこのやり方を貫こうと思っています。

(福岡県私設病院協会ニュース 平成12年7月号に掲載)

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21世紀。医療はアメリカの後を追うのか?

昨年11月に10日間のアメリカの医療福祉事情の視察に行ってきました。とても有意義であったと思いますので御報告いたします。

まず平均在院日数の短さが目立ちました。普通の平均入院日数は肺炎2~5日、 虫垂炎2日、 大腸癌術後3~4日、心筋梗塞バイパス術後4~6日、と驚くべきものでした。乳癌は1日で退院。傷のつけかえの仕方を教えられ自分でするとのことでした。入院期間は日本は長すぎると思いますが、アメリカは短すぎではないでしょうか。これは結局の所、「お金」の問題とのことでした。病院に居たいけれどお金がなくて居れない。あるいは、病院側からすると長く置くと、保険上損をするので、早く出す。ということが有る様です。病院を数日で出るとどこへ行くかということ、ケアセンターか在宅です。まず最初に見学したケアセンターは驚きでした。そこは、4000ドル/月もかかります。しかしドクターは1人もいなく何か有れば救急車を呼ぶ?とのこと。ここには180人もの人が、日本でいえば「入院」して暮らしているのに、何か起これば救急車とはびっくりさせられました。

在宅に関しても、やはりお金の関係で訪問が減らされる一方の様でした。カリフォルニアの場合年間80~90回から38回へと減らされました。ただし、「在宅」という言葉を聞くと、どうしても、私達は、「老人医療」を考えますがアメリカではむしろ本当は入院で行ないたいがお金が高いから在宅でしている、つまり、急性期医療の1週間目位以後を在宅医療が肩がわりしている様でした。日本の様に介護だけの訪問は、お金はおりず自分で払う外はないそうです。在宅医療も15年前にビジネスとして一般的にスタートし、多くの業者が、参入したものの20%数が減ったそうです。そこで事業が永続する秘訣を聞いてみましたら、 ①質の向上維持と②先を読むの二点でした。この2点は大変に参考になりました。①は説明の必要はないでしょう②は例えばお金の関係で訪問日数が減らされる情報をいち早く入手し、徐々に減らしたとのこと。この2つは普遍的なことで他にも応用できるものと思いました。

リハビリテーション専門病院も訪問してきました。この病院は全米でもトップ10、西海岸で2位にランクをされているというロスアンジェルスの200床の病院です。リハビリテーションは1人1日3時間とは恐れ入りました。このことは本当に尊敬してしまいます。やりたくても、とてもいつまでたってもまねできない事の様に思えました。他の6つの大きな病院からこのリハビリ専門病院に21日後に来るとのことでしたが、その理由というのは、これも保険がらみで、要するに「脳血管障害」なら 21日間入院が認められるからとのことでした。その後病名が「脳血管障害回復期」に変わり、リハ専門病院には29日間いるとの事でした。急性期リハビリの定義も「3時間リハを必要とする状態のリハ」との事でした。日本とは違いました。どうして、この病院はランクが上なのかとの質問には、究極は壊れた脳細胞の変わりに、電気刺激か何かで麻痺した所を動かすアンドロイドみたいなものまで考えているのには驚きました。質問に答えたのが経営者でなく医師であったのでそういう答だったのでしょう。もっと経営的な事も知りたかった気がします。

最後に一般市民代表としてデパートでレジを打っていた米国人の意見をきいてみました「アメリカの医療は高すぎる。友達はお金が払えず病院を出た。まだいてもいいですよ、ただ、これだけかかりますよと言われれば出ざるを得ない。」とのことでした。アメリカ人の1つの意見としては貴重だと思います。

長くして短かかった10日間の旅、本当に有意義でした。以下をまとめとしたいと思います。

①在宅医療とは日本の老人の話とは違い急性期医療の病院での治療を家ですることである。理由はお金の様だ。
②在宅医療会社の規模は大きい。
③在宅医療会社も淘汰されている。生き残りには、質の向上と先を読む力(情報力)が重要である。
④医療とは関係ない「介護だけ」にはお金は出ない。やりたかったら自分のお金で。
⑤リハビリの1人1日3時間は感動的であった。
⑥アメリカでは保険会社が、医療費の支出を押さえる役割を果たしている。
⑦お金があれば豊かな老後。

視察中最初から最後まで貫かれたテーマは「お金」でした。日本の21世紀には、アメリカの良い面は真似し悪い面は後を追わないでほしいと思っています。

(福岡県私設病院協会ニュース 平成12年1月号に掲載)

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療養型病床群の保険選択にあたって考えた事

介護保険を前にして、多くの病院・医院では如何に対応していくかを日々検討されていることと思います。 当院では急性期の1病棟と、完全型の療養型病床群2病棟を有し、計161床、その他に透析・訪問看護・訪問リハビリテーション・デイケアを行っており、訪問介護も計画中です。

点数に惑わされるのはもう止めよう

この中でも療養型病床群やデイケアについては、昨年から様々なシュミレーションを実施すると共に、「医療」と「福祉」についての取組と、介護保険に対する考え方を整理してきました。仮単価が出るまで、まだ出ない、まだ出ないと、はっきり言ってやきもきしておりました。点数を入力してシュミレーションしなくてはと。 しかし、今は違います。点数にあくせくした所で、それはどうせ変わるもの。基本的には、厚生省つまり国にお金がないということです。お金が足りなくなると解っているからこそ介護保険を導入するわけですし、どちらを選択しても2、3年先ではどちらも「締めつけ?」が厳しくなるのは覚悟して取り組まないといけないと思います。 それよりも、もっと当院の原点に立ち戻って、当院が何をすべきかを考える事がとても重要な事であると思うようになりました。当院の理念は、「急性期から在宅医療までトータルな医療福祉サービスを通じて地域に奉仕いたします。」というものです。この理念を基に、又、若松区に他に療養型がない事を考えれば、答えはおのずと出てきました。

レベルアップが最重要課題

一番重要なのは、常々従業員に言っていることですが「自分達のレベルを少しでも上げていこう。」ということだと思います。具体的には生活リハビリの観点から、看護補助者に対し、ホームヘルプ2級あるいは介護福祉士の取得を奨励し医師やPTによる研修により全体のレベルを上げることを実行しています。この過程において2つの療養型病棟に対して回復期あるいは維持期の区別が徐々についてきました。

ビジネスという言葉に疑問

介護保険創設の中で、当院が重要視しているのは、今よくいわれている介護保険の開始は『大きなビジネスチャンス』だと言う視点ではなく、『当院にとって、必然性のあるサービスを、必要としている人に順次提供をしていく。』という考え方です。
一般企業の基本理念とする「利益追求」を第一に考えると、今まで行われてきた事とのギャップが非常に大きくなると予想されます。マスコミは医療の事を語る時に、「医は仁術」、「赤ひげ先生でなければ」ということを常々求めてきます。しかし今回、介護に関してはあっさりと「介護ビジネス」という言葉を平気で使っています。ビジネスで介護ができるでしょうか?畑違いの人が儲かりそうということで、介護ができるでしょうか?利益追求が、患者さんの不利益に繋がる事だとしたら大きな問題になると言えます。

介護難民...解決の糸口つかめず

もう一つ問題となるのが、介護度が軽いがどこにも行くあてのない人、いわゆる『介護難民』の件です。しかし、介護難民の問題は一医療機関では解決の方策がなかなか見当たりません。それはその方々が、家もなくお金もなくあるいは家族がいても様々な理由により引き受けることを拒絶されているからです。
最近よく耳にするようになった「ケアハウス」「介護付老人マンション」等に入れる経済力を持った方も中にはいらっしゃいますが、それに該当しない方も一方ではこれから多く発生してくることを十分考えておく必要があるといえます。この解決にはやはり公的な大きな力が必要ではないでしょうか。家庭で生活できる方には、その環境に近い方が多くの人にとって幸せだと考えるのは当然です。療養型を有する医療機関としても、今までもそうですが、これからもさらに「いかに早く在宅への復帰をサポート出来るか」「人間の尊厳をいかに尊重できるか」が問われる時代に入ってきたと考えています。

まとめ

当院が今行っている事は、当院の理念に立ち戻って質を上げる事であって、決して点数の計算をあくせくするというのではありません。しかし、いわゆる介護難民に関してはお手上げ状態です。
先日、ドイツの介護保険のシンポジウムでおいでになったDr.Pick氏にこの事を尋ねた所「そりゃ私たちの範疇ではない。社会保障の問題でしょう。」とあっさり言われてしまいました。何か公的な解決はありませんでしょうか。 常々院内で言っていることは、「介護保険の制度にふりまわされるのはやめよう。ともかく自分達の質を上げよう。少しでも患者さんに喜んでもらえるようにしよう。そうすれば、結果は必ず後からついてくる。」ということですが、これにつきると私は思っています。そして、患者さんが一日でも早く自宅へ帰ることができるようにサポートしていくことが、私達の任務だと思います。

(北九州市医報 平成11年11月号に掲載)

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医業経営アンケートの集計結果をみて

昨年度の健康保険法等の改正をうけてのこのアンケートの結果を、興味をもって読ませて頂きました。今回、市医師会からの依頼によりこのアンケート結果について福祉委員の一人として感想・意見を寄稿させていただきます。

広く知らせたい驚くべき結果

まず思ったのは、改正による収入減が70%もの医療機関に影響を及ぼしている事実です。しかし果たしてこの事実を一般の人が、知っているでしょうか。恐らく一般の方は「お医者さんは不況に関係なく儲かっていいよね。」と今だに思っているのではないでしょうか。その考えを改めてもらうには、PRが非常に重要です。PRは宣伝ではなく『PublicRelation』即ち民衆との関係、公に広く知らせる事です。しかし、このPRは、従来より私達医師はどうも不得意な分野でありました。以前ある新聞社の方に言われた事が有ります。「お医者さんからの投書なんか見た事ないですよ。不満が有るならデモでもストライキでもして厚生省の前でムシロひいて座り込みしたらどうですか。本当にお医者さんはアピールが下手ですね。」と。皆さんどう思われますか。極端な話かも知れませんが、確かに新聞に医師側の主張が載っているのは見た事ない様な気がします。いつも一方的に報道されているように思えてなりません。このアンケート結果も、集計が終わった時点が始まりだと思います。こうやって市医師報で特集が組まれる事は、大変重要です。さらに、どうやって世論を作って、制度等の納得いかない部分を変えさせていくかを考えなければなりません。例えば、北九州市医師会の名で新聞に投書する、記者会見する。インターネットのホームページにのせて意見を募る。色々な方法を使って、広く大衆に知ってもらうことが、重要な事ではないでしょうか。個人で言ってはグチになりますので、こういった医師会の行動に対して大きな期待をいたしております。

各自の努力もやはり必要

しかしさらに大事な事は、今何が出来るかを考えて行動しなければ、行き着く先は自ずと見えていることです。「制度が悪い。制度が悪いのでつぶれた。」と言ってみても何も残りません。今できる範囲で、何かしら努力をしなければなりません。私は、医療を人に対するサービス業として、捉えています。患者様に選ばれるための環境作りが必要で、それは福祉との連携や、一般企業のようなすきま市場の発見であると思われます。その他、当たり前の事ですが、専門技術の追求や予防への取組みによる底辺の増加、医師の丁寧な説明、あるいは、職員の接遇、建物の充実など、色々考えられると思います。

まとめ

以上の様に、各自の努力、そして医師会の力、この2つがうまくかみ合って初めて、100%は無理としても、私達が求めている医療界に近づくのではないでしょうか。

(北九州市医報 平成11年4月号に掲載)

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最近思っている事

制度開始迄あと1年数ヶ月となった介護保険を前にして、各界の方々が多くの意見を出されていますし、様々な講習会も開かれています。その中には、有意義なものもあるし、そうでないものもある様です。その結果として、これだけ情報が氾濫してしまうと、多くの医療関係者が混乱し戸惑っている様子があちこちで伺えます。

私は、しかし今さわぎたてるのは、そして、オドオドするのは止めようと思っています。なぜなら、まだ形ができていないものに恐怖をいだいても意味がないと思うからです。ただ言える事は、『地域に密着した医療を、良心的な医療を提供し続けていれば良いのだ』ということです。そうすれば、道は自ずと切り開けるだろうと思っています。

以前、ある雑誌を読んでいたら「敗軍の将、兵を語る。」というコーナーで、ある病院の院長のインタビューがのっていました。このコーナーは要するにつぶれた会社の社長が色々と言い分をのべる(言い訳をする)コーナーです。その記事で繰り広げた理論は、法律が悪い、行政が悪い、こんな制度があるから自分みたいに良心的にやっている病院がつぶれるというものです。「私は悪くない制度が悪い。」ということが最初から最後まで続きます。確かに一理あろうかとも思われますが、つぶれてしまっては自分が悪いとしか言い様がないのではないでしょうか。すかさず次週の編集者への手紙のコーナーで、批判が寄せられていました。(何と北陸の私の友人でした。)これから厳しい時代が続くと予想されますが、だからといって、自分が良くて制度が悪い等、言い訳だけはしたくないと思っています。

しかし、私の病院の様な私設の病院は、社会に貢献するにはその前提として、何といっても経営が成り立っていなければなりません。それと密接に関係するものは診療報酬です。このことについていつも医師の間で不満が充満している事は事実です。よく医師会報等の会員の一言というようなコーナーには毎回投書がいくつもあり、内容的にも、賛同出来るのが殆どです。しかし医師会報は会員しか見ず、一般の人は誰も見ません。同じ仲間しか見ないのならそれは「意見」というより「グチ」に近いものがあります。以前新聞社の方から言われた事があります。「看護婦さんからよく投書はあるのですが、お医者さんからの投書は皆無です。もっと外へ向かって言いたい事を発信なさってはどうでしょうか。」と、いう内容でした。皆様、この意見どう思われますでしょうか。医者は儲けすぎと世間はいまだに思っています。「そんなことはないよ。経営に色々と苦労しているんだ」とアピールすべきは当事者以外ないはずです。他人はやってくれません。

この会は、大学で学問を追求するというよりは、本当の現場の臨床に携わる外科医の集まりだと聞いています。臨床に携わる者として、医療の実際、あるいは、医療の機構の問題点など、情報を発信できる機関であればと思っております。

(福岡県臨床外科医学会々誌 平成11年3月号に掲載)

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英国の在宅ホスピスケアの講演に関わって

平成8年10月24日、英国からニッキ・ル・プリヴォストさんをお迎えして、英国の在宅ホスピスについてお話ししていただきました。質問の通訳等一部分関わらせていただきましたので、記録にとどめておきたいと思います。

プリヴォストさんは、1954年生まれ、英国のサウスブロムリーホスピスケアの婦長さんです。教職の免許や、死への学問の免許等とられ看護学で学士号をとられている方です。このホスピスケアは12万人の地域をカバーしているとのことでした。

講演で印象に残ったのは、痛みには身体的、精神的、社会的、経済的等色々あるということで、なるほどと考えさせられました。私は今まで職業柄、身体的な痛みのことしか頭になく、深く反省させられました。又、ホスピスのスタッフは、家族と本人の両方共、ケアすることが必要とのことでした。スライドの中で一番印象的だったのは、ホスピスでお酒を飲んでいるところでした。何とすばらしいことでしょうか。

質問や御意見もたくさん寄せられ、それらの答え等を考え合わせ私なりの感想を述べさせていただきます。

1)
日本では、確かに色々な職種の方が在宅の方を訪れていますが、英国のような強力なコーディネーターがまだ十分ではないのではないでしょうか。頻繁なミーティング等で対応していかなければならないと思いました。
2)
精神的サポートをよりよく行う為に、例えば宗教家の方等チームに加わっていただいてはどうでしょうか。
3)
どうしても癌告知の問題はさけて通れません。イギリスでは、告知は90~95%だそうです。宗教的なことも関係有るかも知れませんが、インフォームドコンセントについてもう一度考え直すべきだろうと思います。
4)
財政面に関して、行政方針の違いも有るでしょうが、それはすぐには変わりません。又、チャリティー(善意の寄付)も日本ではあまり期待できません。英国では70%の予算がチャリティーだそうです。経済的なよりどころを明確にしなくては話が進みにくいだろうと思います。
5)
ナイトシッター、買物同行等、「あったらいいなあ」と思うことは、すべて英国には有る様です。ですから、考えることは同じで、日本はただ遅れているだけだと思いました。先進国と発展途上国の違いですから、いずれ追いつけ追い越せで、方向は間違ってないと確信し10年位遅れているだけだと希望を持てました。
6)
私事で恐縮ですが、10年前のことです。私のアメリカの親戚が大腸癌になり肝転移が有り、ナースが塩酸モルヒネを打ちに毎日自宅に来ている光景に出会いました。10年前ですから日本で在宅という言葉もほとんど使っていない時代で、とてもショックを受けました。(何で入院しないんだろう…)しかし今ならそうは思いません。10年たって社会の状況が大きく変わり、若松でこういうすばらしい会が持たれていますから。徐々にですが、在宅ホスピスに関して認識が変わっていくことを確信しています。

(若松区地域ケア研究会記念誌に掲載)

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